ドライアイは眼の表面と眼瞼に影響を及ぼす多因子性の病態です。ドライアイには、以下のように様々な種類があります。

  • 油層によって涙液の蒸発を抑えられない蒸発亢進型ドライアイまたはマイボーム腺機能不全(MGD)によるドライアイ、
  • 涙液の分泌不足による涙液減少型ドライアイ、
  • 蒸発亢進型ドライアイと涙液減少型ドライアイが組み合わさった混合型ドライアイ。

その結果、ドライアイ症候群は複数の治療を必要とすることが多いため、患者さんの管理が困難となる場合があります。

IPLは、ドライアイに利用可能な新たな治療法の1つです。その多数の作用機序によって、マイボーム腺機能不全、炎症(酒さ、眼瞼炎)、Demodex、神経障害性疼痛などの根本原因を治療することができます。

IPL(高強度パルス光)およびその作用とは

IPLでは、多色光を発するフラッシュランプによって、高強度パルス光を照射することができます。

 

IPLの主な作用機序の1つが温熱作用であり、マイボーム腺のマイバムを液化するため、涙液油層の分泌を担うマイボーム腺の閉塞を取り除きやすくします。

 

これまでに作用機序がすべて十分に解明されているわけではありませんが、多数の試験で、眼表面に対する抗炎症作用、抗感染作用および抗寄生虫(抗Demodex)作用もあることが示されています。IPLにはほかにも、角膜神経や眼表面の神経に対する作用があり、神経障害性疼痛を緩和します。

IPL治療を施行するタイミング

治療アプローチにおけるIPLの役割は患者さんによって異なります。たとえば、すでにいくつかの治療を受けており、眼瞼ケアと抗生物質による治療が奏効していない患者さんに対しては、二次治療や三次治療としてIPLを施行することができます。もっとも、その作用が極めて速く、長期間持続することがあるため、診療内容によってはIPLをさらに早期に施行できるものと思われます。

 

なお、ドライアイ治療はいずれも補完的なものであり、患者さんの治療アドヒアランスや病歴に応じて治療を切り替えることができることに留意することが重要です。

IPL治療前の推奨事項とは

患者に行われたIPL治療 IPL治療は診療所で施行することができます。患者さんは化粧を落とさなければなりません。顔を剃っていれば理想的です。

 

治療手順を患者さんに説明する必要があります。これは、眼周囲領域の両側または重度の眼瞼炎の場合は眼瞼に4~6ショット照射する簡便で迅速かつ痛みのない治療法です。眼瞼に対する治療では、患者さんの網膜を保護するために強膜シェルを使用しなければなりません。治療中に温覚を感じることがあります。

 

IPLは、ほとんどの肌質に対して施行可能です。ただし、使用する出力レベル(1~14 J/cm2)は患者さんのフォトタイプによって決まります。色白の肌の方が出力を高くする必要があり、浅黒い肌は皮膚色素によって光が吸収されやすいため、出力を低く設定する必要があります。過剰照射した場合の皮膚熱傷を除き、副作用はありません。フォトタイプ1~5に推奨される標準フルエンスは8 J/cm²です。眼瞼に対する治療では、フルエンスを4~6 J/cm²に下げる必要があります。

治療手技について

治療時に、患者さんと医師はIPLに同梱されている保護眼鏡と保護シェルを使用しなければなりません。光透過率を向上させるため、治療部位にジェルを塗布します。C.STIM® IPLシステムは、皮膚に対して確実に光を均一に照射するStim-ULI™と呼ばれる特許技術を搭載しています。

 

フラッシュランプより以下のように光フラッシュを照射します。

 

  • 眼周囲領域の眼の周囲に照射
  • または、眼瞼下に金属製のシェルを装着して眼瞼に直接照射 

フラッシュランプより片側当たり4~6ショット照射します。15日間隔で3~4回のセッションが必要です。治療の効果や発現した症状に応じて、通常は6ヵ月ごとに追加のフォローアップセッションを実施することが推奨されます。

 

治療結果を最善のものとするため、セッションの最後にマイボーム腺圧出を行うことが推奨されます。IPLの熱作用によって、マイバムの圧出が容易になります。

適格となる患者さんとは

IPLの主な適応症は、マイボーム腺機能不全(MGD)や眼瞼炎による蒸発亢進型ドライアイです。

 

もっとも、眼痛やシェーグレン症候群の患者さんなど、他の原因によるドライアイにもIPLを使用することができます。

 

このほか、霰粒腫を繰り返す場合などに、特に禁忌なく小児にもIPLを使用可能です。

 

以上のことから、IPLはドライアイを治療するのに効果的な技術です。患者さんによって効果に差がある場合があります。IPLは単独で使用するのではなく、長期的な効果を得るための治療手段の一部として使用する必要があります。

Source: Presentation by Dr Serge Doan (Bichat Hospital, Fondation Rothschild, Paris, France) at the ACOS [Association des Centres de l'Oeil Sec — Dry Eye Centre Association] 2022 Congress