IPL技術は1994年以来、皮膚科において、酒さ、ざ瘡、血管病変、加齢に伴う色素性病変などの様々な病態の治療のほか、皮膚の若返りや永久脱毛に利用されています。IPL技術は1994年以来、皮膚科において、酒さ、ざ瘡、血管病変、加齢に伴う色素性病変などの様々な病態の治療のほか、皮膚の若返りや永久脱毛に利用されています。

IPLが眼科に導入されたのは、酒さのIPL治療時に、患者さんのドライアイ症状が大幅に改善したことに気づいた米国人医師Dr Toyosのおかげです。

 

その後、IPLの利用は皮膚科から眼科へと広がり、特にマイボーム腺機能不全を伴う蒸発亢進型ドライアイの治療に用いられています。. 

IPLの物理的原理 
 

IPLは、キセノンフラッシュランプを用いた高輝度フラッシュの発光に基づいています。レーザー療法とは異なり、IPLでは紫外線から赤外線までの非コヒーレントの多色光を用います。このIPL光はフィルターを通過して紫外線を除去し、ドライアイに効果のある赤色光と赤外光のみを保持します。

 

発光スペクトルはIPL装置や臨床適応によって異なり、400~610 nmから1200 nm、フルエンスは8~56 J/cm2です。眼科で使用する出力レベルは、破壊を目的とする皮膚科で使用される出力レベルよりもはるかに低く、眼科ではむしろ調節を目的としています。

IPLシステムの大半は、皮膚の加熱を抑えて皮膚の熱緩和時間を順守する非常に短い校正パルスに基づいています。この休止は、皮膚や眼瞼が熱傷ではなく刺激を受けるようにするために重要となります。IPLシステムには、パルス列を調整しないものもあるため、エネルギーが適切に供給されないと皮膚に熱傷が生じることがあります。

IPL装置技術スキーム

IPL装置は、フラッシュを照射するフラッシュランプを備えたハンドピース、フィルターのほか、場合によっては、皮膚全体に均一に光を照射するようにする光拡散システム(STIM-ULI™:Quantel Medicalが特許を取得しており、C.STIM®でのみ利用可能な技術)で構成されています。

 

また、IPL装置には、システムの信頼性と各フラッシュで照射されるフルエンスの一定性を確保して、患者さんの安全および快適さを最善のものとするために、冷却装置が備わっている場合もあります。

IPLの作用機序とは

主な作用機序は、分子である発色団(メラニンやヘモグロビンなど)によるエネルギーの蓄積であり、このエネルギーが熱に変換されます。

ドライアイ治療の作用機序は未だ十分に解明されておらず、多数存在すると思われます。以下は、これまでに臨床診療で観察され、臨床試験で明らかにされているIPLの作用機序の非網羅的リストです。

 

1. 血管作用

まず、IPLは血管に作用します。皮膚科では、血管(すなわちヘモグロビン)に照射すると、高レベルのエネルギーによって血管内血栓が生じます。

 

眼科では、眼瞼部位の毛細血管拡張が少なくなり、フラッシュはむしろ血管部位および血管周囲に局所的な熱作用をもたらします。これにより、血管の機能が調節され、その温度が変化し、マイボーム腺にあるマイバムが液化します。眼瞼炎の症例では、IPLセッション後に眼瞼の毛細血管拡張の数が減少したことが諸試験で示されています。

 

このマイバムが液化したら、瞼板を圧迫してマイボーム腺圧出を行うことによって、マイバムを除去することが重要であり、IPL治療の効果を高めることができます。

Bibliographic reference: Bäumler W, Vural E, Landthaler M, Muzzi F, Shafirstein G. The effects of intense pulsed light (IPL) on blood vessels investigated by mathematical modeling. Lasers Surg Med. 007;39:132–139.

 

 

マイボミア腺機能不全における涙液タンパク質および脂質に対する強力パルス光治療の効果を示す図2. 油層およびマイバムの質を改善

一部の試験では、IPLセッション後にマイバムに対する作用が認められています。

 

実際に、涙液組成の変化が観察されており、1回のIPLセッションから2週間後に、涙液中の蛋白質および脂質の数が増加しました。このため、涙液層の生理に重要なマイボーム脂質であるコレステロール、トリグリセリドのほか、特にリン脂質が増加して、涙液の質が高まります。
Bibliographic reference: Ahmed SA, Taher IME, Ghoneim DF, Safwat AEM. Effect of Intense Pulsed Light Therapy on Tear Proteins and Lipids in Meibomian Gland Dysfunction. J. Ophthalmic Vis Res. 2019;14(1):3–10

 

 

3. マイボーム腺機能不全(MGD)を改善

 マイボーム腺機能障害患者におけるIPL照射後のマイボーム腺の変化写真IPLはマイボーム腺の構造を改善します。一部の試験では、マイボーム腺の閉塞が減少することによって、マイボーム腺の機能が改善することが確認されています。下図に示すように、マイボーム腺の拡張が少なく、腺房の密度が増加しています:


Bibliographic reference: Yin Y, Liu N, Gong L, Song N. Changes in the Meibomian Gland After Exposure to Intense Pulsed Light in Meibomian Gland Dysfunction (MGD) Patients. Curr Eye Res. 2018;43(3):308–1

 

 

4. 皮膚に対する抗炎症作用

IPLのまた別の作用が、抗血管作用とは異なる皮膚に対する抗炎症作用です。この作用は、皮膚細胞培養で明らかにされています。

 

涙液では、酒さの症例に過剰発現するマトリックスメタロプロテイナーゼ-9(MMP-9)の減少のほか、多数の炎症性サイトカインの減少も認められています。IPLのこの抗炎症作用は、最も興味深い作用の1つであり、IPLによってドライアイ症状が改善する理由を説明するものです。

Bibliographic reference: 

 

 

5. 光生体調節

低レベル・レーザー(光)治療の要点とスキームまた別の興味深い作用として光生体調節が考えられますが、この作用がIPLによって生じるかどうかはよくわかっていません。この作用は、コヒーレントレーザー光やLEDを用いた論文で十分に実証されています。光生体調節とは、光による細胞機能の変化を指します。この作用は、光がミトコンドリアの機構を改善することによって細胞機能を調節するため、興味深いものです。その結果、ミトコンドリア呼吸が改善され、線維芽細胞の増殖とコラーゲンの合成が生じることによって組織が若返ります。IPLは皮膚を若返らせるために皮膚科で長年使用されており、眼部位に使用しない手はないと思います。


Bibliographic reference: H Chung. The nuts and bolts of low-level laser (light) therapy. Ann Biomed Eng. 2012;40(2):516–533.

 

 

6. 神経作用

神経障害性疼痛患者さんの治療にIPLを用いると、その患者さんは数週間にわたって疼痛を感じなくなります。このため、感覚ニューロン、副交感神経支配および交感神経支配のほか、マイボーム腺の神経支配の刺激に対する作用があるのは明らかです。この神経作用を実証しているin-vitro試験はありませんが、複数の臨床結果が認められており、総体的症状の点で非常に興味深いものです。

 

 

7. 抗Demodex/抗感染作用

IPLを用いるとDemodexの数が減少することが諸試験で示されています。

 

ある試験では、M3の症例の83%で、3回のセッション後にDemodexが一掃されたことが示されており、3ヵ月間にわたって眼瞼のDemodexの数が漸減しています。

 

Demodexの一掃という点でIPLの作用を明らかにするには、ビデオが最良の方法です。

最適パルス技術による高密度パルス光の滲出腺機能障害に対する治療効果のグラフ化
Bibliographic reference: Huo Y, Mo Y, Wu Y, Fang F, Jin X. Therapeutic effect of intense pulsed light with optimal pulse technology on meibomian gland dysfunction with and without ocular Demodex infestation. Ann Transl Med. 2021 Feb;9(3):2

 

以上をまとめると、IPLには多数の作用機序があり、未だ十分に明らかにされていません。その機序はいずれも、ドライアイの治療で相乗的かつ補完的な作用を示す可能性が極めて高いものです。

 

日常診療で観察された結果は、IPLがドライアイの有益な治療選択肢であることを示しています。

--

Source: Presentation by Dr Serge Doan (Bichat Hospital, Fondation Rothschild, Paris, France) during the Quantel Medical symposium at the SFO 2022 congress.

Replay: https://www.youtube.com/watch?v=Er-t8CdWbP8&list=PLAdA24jY-iBMpYBVqY9N7ARqWqyMPo8UG&index=3